野村萬斎主演で映画にまでなった『陰陽師』シリーズの作者・夢枕獏氏。わたしはプロレスや格闘技が好きなので格闘小説の『獅子の門』や『餓狼伝』を愛読していた。先日、図書館で夢枕獏氏の『秘伝「書く」技術』なる本が目にとまった。よくある「○○の書き方」というノウハウものではなく、小説家としてどのような生活をしてどう作品を生み出すのか「そんなことまで教えちゃって大丈夫?」と心配になるほど作業工程や思考の仕方が具体的に紹介されている。
夢枕獏氏が「アイデアが出てくる」ことについて書いていたので「降りてくる」感じに思い至った。「アイデアが降りてきた」、「曲が降りてきた」などと表現することは多い。数年前になるがB’zのボーカリスト・稲葉浩志はゲスト出演したラジオ番組で「散歩している時なんかによく歌詞が思い浮かぶ」というようなことを話していた。自然体で「降りてくる」という感覚かもしれない。
『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』などを担当するテレビプロデューサーの佐久間宣行氏はついこの前、10月20日放送の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO) 』(ニッポン放送)でCM明けに『Here Comes The Sun』がBGMに流れると「これはマジの話なのですが、ビートルズを聴いていると、いい企画が降ってくることがあります」と話していた。
夢枕獏の場合「アイデアは死ぬほど考えて」絞り出す その感覚の表現が小説家らしくてよい
さて「アイデアが降りてくる」を考えるきっかけになったのは夢枕獏氏の本だが、当人はふわっと降りてくる感覚とはずいぶん違って「死ぬほど考える」のがスタイルだという。そのすさまじさはいろいろな言葉を用いて記されているが、特に「神を生む力」を得るという表現には感服した。自然にふわっと降りてくるわけではなく、死ぬほど考えた見返りとして神は力をくれるというところか。
10年以上前になるが、お笑い番組『笑撃!ワンフレーズ』(TBS)で「アカシックレコード」という予言方法が話題になった。予言の信憑性について語ることはできないが、その当時はテレビで見ていて「降りてくる」という感じだった。そんな風に思うのだから、正直なところわたしは「アイデアが降りてくる」ことへの憧れがあるのだろう。